リチャード・グレイ博士インタビュー│ブルックリンプログラムについて リチャード・グレイ博士インタビュー│ブルックリンプログラムについて

ブルックリンプログラムの紹介

 リック・グレイです。今日は神経言語プログラミングとブルックリンプログラムの物質使用障害(薬物依存)への応用についてお話しします。
 日本と同様に米国でも当初NLPは個人の能力向上や成功を志向したプログラムでした。NLPはセラピーをルーツにしていますが、ビジネスモデルとして生産性や能力の向上のために使われました。このセラピーという根幹に立ち戻り、私はNLPのツールとカール・ユングの理論に基づいた物質使用障害の治療プログラムを設計しました。このプログラムの構造は、ユング派の理論にとどまらず、極めて深いレベルの神経科学とも呼応しています。

興味深いですね。壮大な学問的背景がうかがえます。

 我々はこのプログラムをブルックリンで7年間運用しました。ブルックリンの連邦裁判所で薬物治療プログラムとしての実施が認められました。

司法機関のお墨付きをもらったわけですね

 ええ。この時に期間を16週間に延長しました。我々はプログラムの長さとして16週も必要ないと考えていましたが、アメリカの専門家が16週間以内のグループプログラムは十分な効果を出せないとの結論を出していたからです。クライアントはプログラムの終了時の成果に大いに満足し、「ブルックリンプログラムは薬物治療プログラムである」という認定書の文言を人間開発のプログラムであるとの表記に変えるように言ってきました。それはまさに言い得て妙なのですが。

嬉しいお話ですね

 ブルックリンプログラムが薬物・薬物関連問題に効果を持つのは、人間の非常に深いレベルに働きかけるからです。そのユング理論の根源はそれぞれの人に深いレベルでの個人的成長の可能性を開いてくれます。それは科学的な基礎(人間の行動の神経学的な部分)の点からもユング派の理論の点からも言えます。2000年代初頭のある時、私は神経科学と薬物乱用治療に関する初期のプレゼンテーションの場に足を運びました。そこで中脳ドーパミン系の生理学について学びました。突如光が差した感じがして、今まで私たちのしてきたことが最新の神経科学と完全に一致することに気づきました。その後もアディクションの科学を追いかけ続ける中で、ブルックリンプログラムが神経科学の新発見の中核にあり、今日の心理学・社会学の粋と重なり合うことが分かりました。

ユング心理学と脳神経科学の両方を網羅されているのは驚くばかりです。

 最近のジョハン・ハリという人物の著書をご存知かもしれませんが、それはアディクションがいかに共同体の喪失に対する答えとなっているかを述べています。ブルックリンプログラムでは、当初よりより深い意義を理解しています。薬物乱用の治療においてより深い人間の結びつきと方向性の確立が決定的に大事であることです。我々は人間関係自体を突き詰めたわけではありませんが、実際に感情や方向性を掘り下げました。それらのフェルトステート(感じている状態)に含まれているのが、意義ある人間関係、仕事とアウトカム(成果)、各自の人生における本当に意義のある一連のゴールです。

ワンネスグループでも
仲間通しのつながりと一人一人の生きがいや尊厳を大切にしています。

 素晴らしい。最終的にブルックリンプログラムでは以下のツール一式を使います。1)これは薬物のステートをしのぐ気持ちよさのステートを作り出します。2)我々はこれらのステートを彼らの必要や欲求に応じていつでもシンプルな条件刺激で誘発できるようにします。3)それらのステートをユング的な深い自己の感覚へのアクセスに使います。4)その深い自己から彼ら個人だけの一連のアウトカムを導き出します。5)これらのアウトカムを使ってライアントがより有用で魅力ある人生を進められるように手助けする。これらすべての過程で、参加者が一層ポジティブに、グループに関わって周囲の人とつながり、変化や新しい可能性に心を開くことが分かりました。彼らはもっと幸せに気持ちよく過ごす中で力をつけていきました。

その人の人間性を引き出し高めることで
薬物の問題も乗り越えられるというのが本当に魅力的です。

 ブルックリンプログラムが活用する別のメカニズムは、瞑想が前頭葉の機能を高めるという考え方です。実際に瞑想をするわけではありません。しかし、それに類似した心理的な取り組みを行います。その取り組みが前頭葉を強化します。極端な言い方をすれば、前頭葉は薬物や行動のアディクションによって部分的な機能停止になっています。自分の内側の経験やポジティブなリソースに集中することで前頭葉が再び活性化し、それによって選択能力の幅が広がります。そして他の人が薬を使わないようにと言わなくても、自分個人がそう選択できるようになります。それが中心的な狙いの一つです。さらに、ブルックリンプログラムを学んだサービス管理者やセラピスト、関心のある人たちも人生を良い方向に変えていけます。皆より深い道のりや関心に目覚め、かつてないほどに愛や可能性に心を開けるようになります。それだけでも価値があります。その深い人間性、人としての新たな可能性の目覚めがブルックリンプログラムの効能です。
 1999年にブルックリンプログラムをその1年前に終えた100人を調査しました。その結果、治療終了後1年たった時点で50%の人が完全なアブスティナンス(薬物などの依存対象を使わない状態)を保っていました。これは薬物治療プログラムとしては出色の出来です。プログラム初期または開始前に薬物乱用のテストで陽性と出た受講者の間では、30%が治療終了後1年間全く薬物を使用しませんでした。これも、プログラムを講師1人が担当し週2時間16週で実施したことを考慮すれば上等と言えるでしょう。プログラムでは受講者が良い気持ち・感情を持てるので、定着率や修了率も上がり、費用対効果も高くなります。また、プログラムの中で受講者が互いにつながりを築けるのも魅力です。共同体が生まれるのに気づき、お互いを助ける方法を探すようになります。深いレベルで真の自分に、人間とは何たるかに目覚めます。これらの理由により、ブルックリンプログラムをぜひお薦めします。

日本でも刑の一部執行猶予化などの司法制度の改革により、
薬物事犯の処遇が処罰のみの状況から治療を取り入れたものへと変わりつつあります。

 このプロジェクトは開始時より薬物治療プログラムとしてニューヨーク東部地区の連邦裁判所の基準を満たして判事より認可を受けています。このプログロムを薬物乱用者と関わるすべてのドラッグコート(薬物事犯を対象にした特別な司法制度)や保護観察システムに使っていただきたいです。司法の場でこれを実施する利点の一つは定期的に尿検査を行えることです。つまりプログラムを脈絡なく行っているのではなくなります。これらを測定して確固としたフィードバックを得るのは望ましい。これまではアブスティナンスを前提に統計を取ってきましたが、もし政府が終了後の使用回数の増減にも着目してその測定を許してくれれば結果はもっと良いものになったはずです。それを推奨します。

ワンネスグループでも今後積極的にこれを学んで取り入れていきます。

 ワンネスグループは素晴らしい組織です。これまでアディクションへの答えを求めて名だたる人々を日本に呼んできました。ブルックリンプログラムはそれらの解答の一つです(川口衆さんはずば抜けた通訳者でした)。ワンネスグループは治療に心を注いでいるセラピストがいらっしゃいます。今回のワークショップに参加されているスタッフの方たちの学びぶりを見ていると、素晴らしい組織で注目に値すると感じました。依存症に関してご自身の問題への答えや周囲の方を助ける方法をお探しであれば頼れる存在だと言えます。

先生は研究所や大学での専門的リサーチに加え、
保護観察官としてのキャリアも積まれたユニークな方ですが、
ご自身の経歴に研究の関心領域などを交えてお話し下さいますか?

 私の父はニュージャージー州の弁護士で裁判官でした。彼は学問に関して私に3つのルールを言い渡しました。1つは法律を最大限利用すること、これは何かを研究するとすれば徹底的にそのルーツや歴史まで調べ上げるということでした。2つ目は法律家になることは素晴らしい、というのは物の数分で世界のあらゆることの専門家になりことを要求されるからです。教わったことの3つ目は、天才はいつでも打ち負かせる。なぜなら彼らは自分が天才なことに頼って宿題を決してしないからです。

とても独創的な教えをお父様から授かられたのですね

 大学で私は心理学を勉強しましたが、60年代後半の心理学の世界はB.F.・スキナー一色でした。私たちが勉強できなのはほぼ行動主義に限られ、私もスキナーの著作の大半を暗記しました。一言一句でなくてもいい線まで行きました。高校・大学を通じて私はカール・ユングに興味を持ちました。それは彼のUFOに関する著書から始まったと思います。また当時は東洋の宗教にも興味があったので「心理学と東洋の宗教」も読みました。しかし内容が当時の私には重厚すぎました。大学では指南をしてくれる人がいませんでした。少し経って私は保護観察官になりました。そしてフォーダム大学で修士課程を履修しているときに連邦政府に移籍しました。大学での教授の一人がブルックリンの首席保護観察官で、彼が私を誘ってくれました。

先生とのお話では
平均的な日本人よりもずっと東洋の哲学への造詣をお持ちなのに驚かされました。
お若い時から関心を持たれていたのですね。

 ありがとうございます。修士課程では、犯罪学の理論、社会理論、知識の社会学について学びました。修士論文はアメリカ連邦裁判所の証拠採択規則に知識の社会学を応用し、その歴史的経過やそれがどう知識の社会学における教訓となったかについて書き上げました。研究の最後の段階で、我々の法律への視点や社会の理解・構造の法則に元型(アーキタイプ)的な影響があるかについて関心がわきました。同時に私は連邦保護観察官としての仕事も続けていました。最初の5年間は一般の第一線の保護観察官で、次の5年間はコンピュータの担当でした。後半の5年間の間に私はユニオン研究所で博士課程を履修しました。そこで元型の真の意味を探求し始めました。こうして1989年にユング理論の中でも元型に重点を置いた研究を目的としてユニオン研究所に入りました。幸運にもユニオン研究所はプログラムの一部として何か最新のものを学ぶことを規定していました。そこで私はNLPを選びました。

NLPはどのようにしてお知りになったのですか?

 最初にNLPをタイム誌で知りました。そこではNLPはジークムント・フロイト以来の心理療法の重要なブレークスルーだろうと書かれていました。記事では2つの手法が紹介されていました。1つは基本的なラポールとミラーリングで、もう1つは問題を起こしているパート(部分)に直接話しかけ変化について交渉することでした。私はそれをクライアントに試してみようと考えました。クライアントの1人はマフィア集団の一味…まだ構成員の立場は得ていない…でした。部屋に入ってきた彼の姿勢をミラーリングし始めました。すると彼は私が保護観察官で自分が保護観察所にいることを忘れてしまいました。そして最近マフィアのボスが殺害された事件で出入りに使われた秘密のドアなどの特ダネについて話し始めました。彼が事務所を出るとFBIに電話を入れて処理してもらいました。別の時には、同じ男が入ってきて、またミラーリングをしました。今度も彼は私が保護観察官であることを忘れてしまいました。そして、彼らが連邦地検にスパイを送り込んでおり起訴に関する極秘情報をすべて流していたことをばらしました。彼が出て行ったあと、電話を取って連邦検事に報告しました。彼らは数週間後にオフィスで女性を逮捕しました。
 タイム誌記事で読んだ2つ目は「パートに話しかける」でした。私のクライアントに素敵なアーティストでしたが、コカインの密輸で逮捕された男性がいました。彼は自分のギャラリーを開くお金を稼ぐためにそれをしていました。そのために彼は全部のギャラリーをひどく恐れるようになりました。そこで私はタイム誌に書かれていた通りにギャラリーの開設を恐れている彼の部分に話しかけました。1か月後に彼はギャラリーでの仕事を得て3か月後には自分のギャラリーを開きました。

凄いですね。雑誌の記事を試しただけでこれだけてき面の効果があるとは。

 こうして博士号を取ったときに新しいこととしてNLPも学びました。博士課程を修了する頃に薬物治療のケースを任されました。NLPとユング理論というツールを持っていたことは幸いでした。しかしどう使えばよいのか分かっていませんでした。私はユング派のセラピーに価値を見出せませんでした。NLPの方は素晴らしい。薬物乱用者に対して私が何をすべきか「専門家」の意見を聞く代わりに学術誌をあさって何が書かれているかを調べました。学術誌からは基本的に皆がしていた全部のことは誤りであることが分かりました。そのため、私は学術誌・NLP・ユング理論に基づくプログラムの開発を始めました。1999年に私は中脳ドーパミン系に関するセミナーに出席しました。それは私たちがどのように報酬や罰の重要性を理解するかと言う無意識の部分についてでした。そこで気づいたのが、私は相手に何も教える、誰かに対して何かを教え込む必要はないということでした。私に必要だったのは、経験を与えることでした。その時点で、私はプログラムを改変し、薬物への言及を取り除いて薬物乱用を超えた枠組みを描けるようにする経験を与えることだけに基づくものにしました。その5年間で、プログラムは何百人もの人たちを癒し、政府の資金を何百万ドルも節約するまでに成長しました。

常にオープンに知的好奇心のアンテナを張られて、
最新の知見をすぐに取り込まれているのが分かります。

 次席保護観察官だった当時の私の上司からは、それ以降何度も一番ひどいケースばかりを送り込んでいたのだと言われました。後の面接などでその人たちが私のプログラムに乗らなかった問題の少ない人たちよりもうまく調整が進んでいることが分かりました。プログラムの実施期間中に彼はそれを決して口にしなかったのですが。しかし今では彼はそう言っています。当時の私はクライアントを保護観察所に来る通常の人たちだと考えていました。

上司の方もブルックリンプログラムの効力をそれだけ信用されていたのですね

 通常、我々は最大20人が囲めるミーティングルームのテーブルで治療グループを行っていました。上司はグループの最中によると殺人や銀行強盗や薬物の取引を行っていた重犯罪者の面々が全員トランスのエクスタシーに入っていたとよく言っていました。中では今でも連絡をくれる人もいます。
 年月を重ねる中で、私はプログラムに関連した原理の研究をつづけました。また、他の人たちにもプログラムを教え、彼らも同じ結果を出し続けました。これは各個人の尊厳を向上させ、共同体への編み上げ、人間としての可能性を最大限に目覚めさせることを目的とした人道的なプログラムです。さらに、神経科学を追いかけ続けて理解を深める中で、最初にブルックリンプログラムの開発につながったひらめきが繰り返し肯定されています。アディクションの神経科学が年々進化するのと歩を一にしています。

先生のひらめきの鋭さ、洞察の深さが証明されたわけですね。

 1994年に私は保護監察局を離れ、ニュージャージー州のフェアリーディキンソン大学の犯罪司法学科で教鞭をとるようになりました。その間も私は様々な場所でブルックリンプログラムを教え、学会や大学、NLPの会合で我々の成果を報告していました。2006年にカリフォルニア州での会議で発表した際に、スティーブ・アンドレアス氏がフランク・バーク博士に引き合わせてくれました。
 当時のフランク・バーク博士は、リサーチ&リコグニション・プロジェクトを設立するところでした。彼は神経言語プログラミングの科学的妥当性を確立させるための組織を始めようとしていました。スティーブさんは私が彼の組織にうってつけだと考えたのです。そこから数年で、我々はいくつかのNLP介入技法をテストし、どれが科学的調査に一番適しているかを探りました。我々はファストフォビアキュア(急速恐怖症治療)に関して積み上げてきた成果を完全に説明する神経学的メカニズムを発見できました。それが視覚・体感覚分離(VK-D)プロトコルです。スティーブ・アンドレアス氏、ティム・ハルボム氏、ロバート・ディルツ氏の協力を得て、神経学的メカニズムに沿ったより科学的に精巧なバージョンへとVK-Dプロトコルを再編しました。これをトラウマ記憶再固定化(RTM)プロトコルと呼んでいます。
 最近になって30人規模のプロトコル予備試験を終えましたが、そこでは96%のPTSDが治癒しました。さらに最近のカリフォルニア州サンディエゴでのフォローアップ調査では、88%が治癒しましたが未発表です。NLPのPTSDに対する科学的信頼性の確立に加え、他の人間の悲惨な状況を止める手立ても探っています。それを行う方法には、NLPの作り上げた素晴らしいツールを科学的に調査し、それらを信ぴょう性のある化学的な実践として広く社会に広めることが含まれます。

先生は他の一流の方々と協力されて、プログラムをさらに発展させようと努めておられる。
今後も一層の成果が期待されます。
現在は研究組織であるR&Rプロジェクトのリサーチディレクターでいらっしゃるとのことですが、
具体的にどのようなお仕事をされていますか?

 私の職務は、実験の設計図を作り、独立組織検討委員会(IRBs)の承認を受け、記事や書籍の大半を執筆し、PTSDやRTMの最新研究を追いかけ、他のメンバーやグループにリサーチ情報を提供するほか、何であれ必要なリサーチを実施することです。時には他の組織のリサーチャーをお手伝いすることも含まれます。

興味深いです。
ぜひ日本でも同じ事を始めたい。

 素晴らしい。フランクの希望の一つが同じリサーチの取り組みを日本で始められるようになることです。

私もユングの元型論や
ジョーゼフ・キャンベルのヒーローズ・ジャーニーに大いに興味を持っていますが、
ブルックリンプログラムでこれらをどのように取り入れられているか教えて下さい。

 私はブルックリンプログラムの構造が元型的になるように配慮しています。プログラムは賢者の石と啓示的変容の力の観点から構成されています。ユングは常にある程度において深い自己の啓示を恐れていました。彼はそれが自我(エゴ)事態を破壊するか少なくとも深く傷つける可能性をはらんでいると考えました。通常の人間においては、自我コンプレックスの解消に伴い自我が自己に表現を与える力を増すという発達が自我―自己の軸に沿って起こります。石鹸の泡がスローモーションではじけるところを考えてみれば、表面上に小さな穴が出来て大きくなるのに気づきます。石鹸の泡が自我でそれが穴を通じて内側からあらわにしたものが自己だと想像して下さい。つまり、より深い自己・個性化・自己実現とより小さい自我に向かって、ゆっくりと、しかし着実に進む成長があるわけです。そして当人がそれを経過する中で、戦士の旅または英雄の旅という当然に起こり得るステージがあります。アディクションにとらわれた人には深刻な欠陥を持った自我しかありません。典型として、当人は自己愛的になり、それはほぼ精神病質の地点までいきます。機能的にはアディクトは社会病質者(反社会的人間)と言えるでしょう。ですから、自我の再構築はどんな形であれ(爆発的であってさえ)上向きの効果を生みます。
 非常にわかりやすいです。まさに依存症の回復の文脈から
 私の元々の着想はユングの錬金術的メタファー(隠喩)から来ました。錬金術師は全く価値のないものを集め、それをある種の賢者の石に変える幾何学的パターンを作り上げます。もちろん、錬金術的メタファーにもテージがあります。ニグレド(黒), アルベド(白)、聖なる結婚、女王の死、太陽の誕生、などです。しかし実際的には、これらは賢者の石を生み出す幾何学的配置なのです。その構造に私が達したのは、宗教的目覚めの体験を通じて薬物から解放され、人生を変えられた時でした。どのようにして同種の変容を宗教や過剰なスピリチュアリティなしに提供できるかという質問への答えを私は持っていました。そこで、私はマンダラと錬金術的ワークのイメージを元素の円形の配置として使い、一般的な経験の合体を変革・配置して、より高次の存在を作り出す、目覚めさせるものとして活用することを思いつきました。そこで、人間の心理学で最も根本的な要素は何か自問しました。答えは情動(感情)と条件刺激でした。そしてNLPの技法であるアンカーのスタッキングを深い自己の感覚を目覚めさせるのに使えるなと思いつきました。その目覚めはその人個人の目的・天命を見つけるのに活用できます。

ユングの気宇壮大な宇宙観を
見事に人間回復のプログラムに吹き込まれているように感じます

 私はクライアントがそのような未来を想像する後押しのためにエリクソンの時間における疑似定位とNLPのウェルフォームドアウトカムの戦略を使いました。人間関係・就職・スピリチュアリティ・知性など、複数のレベルでこれらを活用すれば、人生をポジティブで自己肯定的な方向へ進められる具体的で意義のあるアウトカムを構築する手助けができます。

偉大なユング心理学と
現代の催眠療法・NLPの成果を融合されているわけですね。

 私はプログラムの設計と同時期に行動の変容ステージのモデルも知りました。ジェームズ・プロチャスカは1994年に任意のステージを超えた変化の本質について極めて重要なことを発見しました。かれはすべての変化において、無関心期から準備期までは1つのことによって予想できる。それは問題行動よりも価値のあるアウトカムを欲することである。それはユングの理論構造の再確認にもなります。彼ら自身の最も深い個人的な方向性を与えられれば、問題のほとんどは消え落ちてしまうでしょう。治療はそれでも必要ですが、大半の部分で最も深い天命へと立ち上がるにつれて、彼らは健康になっていきます。プロチャスカは、人々が望ましいアウトカムへと目覚めるとき、ネガティブなことへの欲求は自ずと減少することも示しています。

現行の依存症治療のメインストリームとも響き合うものにされている。

 これらの展開と並行しているのがコニレー・アンドレアスさんのコアトランスフォーメーションです。彼女はどんなネガティブな行動でもその肯定的な意図にフォーカスすることで深くスピリチュアルな価値を宿すことができることを見出しました。彼女がネガティブな行動をスピリチュアリティの根っこまで掘り下げたところを、私はポジティブな経験を十分に花開いたスピリチュアルな経験へと引き上げたのです。両方とも元型的なエネルギーを追求しています。

今までたくさんの人をお招きしてきましたが、
先生は本当に日本の依存症回復支援の宝になるでしょう。

 ということは、これを気に入っていただけたのですね。

本当に素晴らしい。

 喜ばしいですね。嬉しい気分になります。

リサーチと言う点では、我々にはワークブックが必要になるでしょう。
その点で、先生にこれから1,2年かけてワンネスの依存症回復プログラムの開発に
ご助力いただきたいと思っています。

 1つ私の方でする必要があるのは、マニュアルを少し修正して読みやすくし、不要なものを削除することです。

ワンネスグループはヒーローズ・ジャーニーの日本での登録商標を取得しました。
そのタイトルの依存症回復プログラムを開発するつもりでいます。
そこにはいろいろなものが含まれるでしょう。

 それはすごい。

私は一層アカデミックにアディクションの文脈で使っていきたいです。

 R&R(The Research and Recognition Project)プロジェクトの狙いの1つはNLPをよりアカデミックにして徹底したトレーニングプログラムを育むことです。そこには修士課程とNLPセラピストやカウンセラー向けプログラムがあります。

我々の治療施設には当然クライアントがいるので、
リサーチのフィールドとして最適だと思います。

 それは素晴らしい。私は本物の人たちとお付き合いできるわけですね。

私が頭の中で温めていたことが今実現しつつあって、
それが先生とお会いしたことでさらに加速していきます。
先生もおっしゃっているように、私もアディクションがそれを超えた力によって変容し、
本人はアディクションの文脈を超えた人間的成長にフォーカスできるようになると考えています。

 その通りです。宗教を持つ人を考えてみましょう。イスラム教・ユダヤ教・仏教・神道など世界中の宗教です。それに目覚めると薬物の問題はどこかに消えます。それは生理学的な現象です。何らかの超自然的な力が存在するかどうかを考え込む必要はありません。ビル・ミラーとジャネット・シーデバカは彼らが量子的変化と呼ぶものを研究しました。彼らはアリゾナ州の地方紙に広告を出して人生に突然の変化が起こった人たちを募集しました。何千人もの人が連絡してきました。宗教的な変化人も非宗教的な変化もありました。しかし、その中でかつて薬物やアルコールに問題のあった全員が自分を依存症の回復者とは表現しませんでした。そうではなく、かつて問題を持っていたが、それが今では完全に無関係になっていると述べていました。それが即座に起こっても徐々に起こっても同じプロセスです。

わくわくしてきました。

 私もそうです。

今年、特定の状況で大きな変化を遂げた人たちを特集した映画を制作する予定です。
ぜひ先生も映画に登場していただき、
またそのような人を紹介していただければと思います。

 喜んで。ぜひ仲間に加えて下さい。
 幻覚剤が同様の効果を生み出すことは多く研究されています。ビル・WがLSDを試していたエピソードは有名ですね。ニュージャージー州で医師をしている友人は、物質使用障害の治療にケタミンを使って成果を上げています。しかし私は薬物なしでもうまくいくと思っています。

私も全く同感です。
日本の依存症治療はよく海外より30年遅れていると言われ、
我々はこれまで海外の施設などに足を運んで学んできました。
しかし自分たちのカリキュラムを開発して海外から視察に来てもらえるようになりたいです。

 アメリカは皆さんより30年進んでいる国ではありません。光明が差している場所もありますが、残りは同じようなものですよ。

今(2016年1月時点)もアメリカからカウンセラーを招聘していて、
奈良の施設で30日間のトレーニングを行ってもらっています。

 私は治療の専門職が持つ前提を心配しています。それには常に強いモラル的な立場が伴っています。「自分の靴ひもで真っ直ぐ立てるように(自分で自分の面倒を見るように)」という言い方が前提になっていて、そこに非常に酷なハードルを高くする考え方が含まれています。それが共感や心に根差していない。私はそこに苦しんでいる人がいる、アディクションだけでなくて苦しみや問題を抱えている人がいる事を見ます。彼らを自由にするのは鞭打ったり説教や教育をしたりすることではなく、彼らが本当の自分でいるとはどういう意味かを感じるお手伝いをすることだと思っています。それは今の私が自然と思うことです。

何とも素晴らしく感動します。
今日は特別にお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。