このインタビューは、2016年11月12日に、原生林が残る、サンタクルーズの森の中のベガ博士のお住まいで行われました。インタビュアーは、JAAI 日本アディクションインタベンショニスト協会代表の矢澤祐史です。

トランスワークとはどのようなものでしょうか?

 トランスワークとは、自分や他人との通常のあり方を越えて、より深く自分自身であるための方法です。
 私たちが話をするとき、どんな言葉や姿勢、表情を選ぶべきか、何をやっても大丈夫か、お互いに適切にな方法を知っていて、自分をコントロールし、社会的な行動をするものですね。実は、そうした場合、別の考えを持っている自分の内側、内なる自分、マインドの深い部分とでもいいましょうか、それ気づかないでいてしまうことがあります。
 私たちは、何らかの形で、そんな内なる自分と接しないと、健康に問題を起こすようなやり方で、内なる自分の存在を知らせることがあります。例えば、それは、自分が期待しているような存在、状態になれていないというような不安な気持ちとして表れてきたりします。それで、私たちは不思議に思うのです。この感覚は、いったいどこから来るんだろう?私の内側からだろうかと・・・もしかすると、私たちは気づかないでいて、そのようにすら考えないかもしれませんね。
 しかし、実際に問題なのは、この世界での自分のあり方について、足りていない、気づけていない何かを、自分のどの部分が伝えようとしているのかということなんです。
 トランスワークとは、こうした無意識のマインドであるそれらの部分とつながり、そこに耳を傾けるための方法なのです。
 トランスワークでは、この無意識のマインドに、すべての決断を行わせるということではなく、意識的なマインドでは引き続いて、自分がどのようになりたいのか、何がしたいのか、人々とどのように関わりたいのかなどを判断するわけですが、私には、それだけでなく、内側の部分を大切に扱うことが必要なのです。
 例えば、何らかの内側の部分が「私は本当はそれをやりたくない」と言うとします。私は「いいわ、それでも構わない。でも今の時点ではそれをやって、後で本当はどうしたかったのかとちゃんとケアをするわね」ということを言わなくてもよいように、私たちが生きるこの世界を歩む時には、ときにはこの未熟な自分自身のマインドと共にある必要があるのです。
 私たちが注意を払えば、そこには利用可能なリソースが存在しています。つまり、通常とは違う意識のステートに入り込んでいくことで、自分が行うすべてのことを本当の意味で助けてくれる、そのリソースにアクセスすることができるわけです。つまり、私たちがストレスや混乱を感じたり、次に何をしたらよいか確信が持てない時には、そこに私たちを助けてくれるリソースがあり、トランスの中ではそのリソースにアクセスできるのです。トランスワークは、そうしたあなたの内なるリソースにアクセスするための方法なのです。

ベガ博士が行う、身体性を取り入れたワークと
これまでの活動の関係性はどのようなものでしょうか?

 私が心理学者、セラピストになる前、私のベースは身体の動きにありました。人と踊ることについて、私がこれまで、仕事の中で見てきたのとは、私たちは言葉を持たない、私たちの内側からのものによって、コミュニケーションを図れるということでした。ですから、私が心理学の世界へと踏み込んでいったとき、私は人々の創造性にアクセスして、私たちの言語よりも、もっと深いレベルに蓄積されたものにアクセスするために、踊ることやダンス・パフォーマンスを作り出す時に使っていた、数多くのテクニックを取り入れて行ったのです。

本質的な魂について語られていますが、
本質的な魂とはどのように理解したらいいでしょうか?

 それは、時に定義するのが難しいものですね。というのも、魂というものについて、人それぞれに様々な受け取り方、理解があるからです。
 それは、時には宗教やスピリチュアリティの領域に入り込みますが、そこには何らかの深い共通性があると思います。人が自分の信じているものを説明するために使う言葉というのはかなり異なっているので、それを表現するために、言葉を用いることは上手くいかないかも知れませんね。なぜなら、私のその言い方は、とても異なる考えを持つ人には伝わらないことがあるからです。
 多分それは、言葉の根底を流れる理解と言え、全てとの霊的なつながり、私の内なる神性とすら描写できるかもしれません。それがここで話している文化や自分の小さなコミュニティを超える部分なのでしょう。そこで私たちは、人だけでなく、すべての生き物のより大きなフィールドとつながり、さらには山や洞窟や岩といったものまでがその一部をなしていると言えるでしょう。ですので、本質的な魂と言うとき、それは私の中に存在するものかもしれませんが、私たちを開き、すべてとつなげてくれるものなのです。
 他者と共にあるということについても、とても興味深いですね。自分の中にある何かを見つけ出すために共鳴するものが、そこにはあります。それが、私がワークを好む理由なのです。1対1でのワークでも、2人いれば共鳴が得られますが、私はグループでワークをするのが大好きです。というのも。そうすれば、自分たちの全てのエネルギーを、探索のワークを支援するために使うことができるからです。自分自身の内側のパートを見つけて、それを他者に目撃してもらい、ミラーリングしてもらいます。そこから癒しが始まると思います。独りでそれをやっても限界があり、最も深い癒しのためには、他者とのつながりが不可欠なのです。
 身体的な部分と身体の動きがとても重要な理由は、それによってより強力な共鳴にアクセスできるからです。
 ですので、私は怒っているとか、嬉しいとか言うことができ、それらの言葉は何らかの意味を持っていて、それらはあなたにとっては、少し違った意味を持つかもしれません。でも、私は怒ってるの!と言えば、それは言わなくても、相手は感じることができるでしょう。私はすごく幸せ!と言えば、私の体身体を通して、相手は感じることができまます。つまり、私一人でもそう表現すると良い気持ちにはなりますが、相手がいて、身体で伝える時には、より深い共鳴が起こるのです。
 私たちは、起きていることへのより力強い理解にたどり着き、相手も自分の身体を感じます。また、身体の動きがわずかだとしても、一緒に座って、呼吸を穏やかにしていると、相手が動揺していても、共にいるだけで共鳴が生まれ、互いの動揺や穏やかさがその瞬間でつながり、相手を穏やかにする場合があり、時にそれが逆になり、お互いが穏やかな所を見つることができるのです。

ワークを通して得られるものとはなんでしょうか?

 私たちの人生の全ての部分だと思います。この世界を進んでいくための日々のやり方、家族と関わり、仕事に向かう。ワークによって影響を受けないものは何もありません。それは、今という瞬間に存在することなく、ただ自動的にこなすのではなく、より意識的に在ることを実践することになるからです。
 身体的な知性を持つということは、夫に話していようと、子供の世話をしていようと、同僚と一緒に仕事をしていようと、また、仕事の問題や改善が必要なことについて考えている時でも、何をしていても、この瞬間の自分の身体の中に存在することです。身体的な知性は、私に自分のすべてと共にあることを可能にし、ずっと多くの創造性を手にすることができるでしょう。
 以前の良くない方法を繰り返す事では、それは実現できません。うまく行く何かという別の可能性に、自分を開きだすのが始まりで、このつながりというものがなければ、私はそれらの可能性を見ることすらできないのです。
 このことを理解しているかわかりませんが、もし私たちが身体的な知性なしで、自動モードで進んだとすれば、私たちの周りの世界はとてもに小さなものになります。そして、私たちが、創造性や身体的な知性と結びつくことで、世界は広がり、より多くの他の可能性が活用できるでしょう。

日本の皆さんにメッセージをお願いします。

 私たちがワークショップを行う場所についてお聞きし、とてもワクワクしています。
 それは、自分やグループが内側に持っているもの以外にも、この特別な場所の全エネルギーともワークできるからです。
 私は、より大きな可能性とつながれるように、私たちをどのように拡げていきたいかについてお話ししました。そしてもし、お分かりのように、私たちが周囲を囲むとても小さな屋根と壁しかない部屋で拡がろうとしても、その中で拡がっていける空間は余りないということになってしまいます。
 しかし、この特別な場所では、非常に特別なエネルギーへと拡がって、皆さんがつながり、それは自分自身の中にも見つけることができて、持ち帰ることができる一部となるでしょう。
 私は、皆さんと共につながり、参加される皆さん、ひとり一人がもたらすものを楽しみにしています。このワークショップは、私一人ではなく、皆さんと共に集って創り出すものだからです。
 私たちは皆、自分の人生の中で、一度に2つのことに取り組んでいると思っていますが、このワークショップでは、特にそのことについてやっていく予定です。
 そしてそれは、自分という全体であるために、自分自身の中で行う必要のある癒しと同時に、私たちがその中に浸り、そして生み出したいと願うこの世界の中で前進し、今この場所でやるべきことをするためのエネルギーとのバランスについて取り組むことです。そこで、私たちは、これら2つの間を行ったり来たりします。癒しを行い、そしてこの世界の中へと進んでいくのです。
 皆さんとこうしてつながれたことに感謝します。ありがとうございます。