アルコール依存を知る
身近な存在のアルコールで依存に…。
健康を害したり、社会生活が破綻するなど、
気軽で身近だからこそ、注意が必要です。
身近な存在のアルコールで依存に…。
健康を害したり、社会生活が破綻するなど、
気軽で身近だからこそ、注意が必要です。
私たちにとってアルコールは生活の一部として存在しており、身近な存在です。
日本では古くから、地域の祭りや神事に欠かせないものであり、日本酒や焼酎など、日本の伝統的な食文化でも深く浸透しています。日常生活においては、コンビニエンスストアで24時間いつでも購入できますし、人間関係を潤滑にする一助を担う手段としても活用されています。日本は古くより飲酒に関して、寛容な文化とも言えます。しかし、「アルコールは依存性のある薬物」という面は、あまり認識されていません。
日常生活に当たり前に存在しているものに、依存性があるとは意識せず、無防備に体内に取り込んでいるのが現状でしょう。またアルコールは生活習慣病を引き起こす要因として知られていますが、健康問題だけでなく、飲酒運転による交通事故、暴力や虐待、自死などの社会問題の陰にも、アルコール問題が潜んでいることが、実は少なくありません。
さらには、環境の変化によっては、誰しも飲酒問題を抱える可能性があると考えることができます。2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた在宅機会の増加や社会情勢の先行き不透明感などから、元々は適度に飲酒できていた方が問題を抱えるケースが増えて(ワンネス財団相談ダイヤル・メールの件数から)います。依存に陥った方の早期発見や早期支援の必要性がある一方で、依存を予防していくメンタルヘルスについての啓発が必要であると考えます。
2014年6月に施行された「アルコール健康障害対策基本法」では、こうしたアルコールが引き起こす健康問題や社会問題を減らすため、国としての基本理念を包括的に定めています。また、各都道府県おいては「アルコール健康障害対策推進計画」の策定が進み、自治体やアルコール問題に関連する諸団体などが連携する取り組みが行われています。
飲酒行動の分布(厚生労働省ホームページより)
飲酒行動に関しては、まったく飲酒しない人から、大量に飲酒をする人まで段階的に分けられており、通常は飲酒量が増えるに従って、問題が増える可能性が高まります。そしてこの状況が進むとアルコール依存に至ります。
なお、アルコール依存は、世界保健機関やアメリカ精神医学会などの国際診断基準において、薬物依存と同じ精神疾患に分類され、診断基準があります。
公式病名について、アメリカ精神医学会の基準(DSM)では「アルコール使用障害」という名称を用いています。
環境の変化によっては誰しも飲酒問題を抱えるとお伝えしましたが、一方で、多くの方がある程度の節度を持って飲酒(正常飲酒)されていますので、酒そのものに対して原因を求めるということだけでは本質的な問題解決には至りません。「健康的に飲酒できる方はともかく、なぜ私はそこまで飲酒することが必要だったのか」という問いを立てることが、解決のきっかけとなります。
アルコールがもたらす酔いの効果(薬理効果)のみならず、飲酒にまつわる様々な行動をするときの気持ちの良さ、酒類が提供される場に居ることの心地よさなどは依存問題有無に関係なく、多かれ少なかれ感じるところです。
ただ、依存状態にある方や依存の問題飲酒の状態にある方は、そのメリットのようなものを過剰に欲して、頻回な飲酒につながっていきます。その方自身の苦しい生き方や、こころのなかに生じるネガティブな感情(ワンネス財団では、生きづらさ・生きづらい感情と呼んでいます)の対処手段として飲酒や飲酒関連行動から得られるメリットを用いるようになるので、飲酒機会や酒量などのコントロールが効かなくなり、問題が生じてもやめられないという状態に陥るのです。ですので、アルコール依存の問題は「(脳の)病気」という表現もできれば、生きづらさにまつわる「こころの課題」という見方ができます。
私たちワンネス財団は、WHO(世界保健機関)が定義する「健康」の状態を踏まえて、依存を抱えている方は肉体的、精神的、社会的の各側面が良好な状態ではなく、その状態を埋め合わせていくために依存に陥っていると考えます。それら各側面を良好にしていくことは言い換えれば‘Well-Being(ウェル・ビーイング)’にもつながり、単に依存対象を断つことや近づかないことが解決ではない・・・全人的な回復成長こそが依存問題解決のみならずアルコール依存予防にも必要なのです。
世界保健機関の国際疾病分類(ICD)や、アメリカ精神医学会の基準(DSM)といった診断に用いる基準以外に、自身の状態を知る上で参考になるチェック項目(スクリーニングテスト)があります。ここでは、世界保健機関により作成されたAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)をご紹介します。
過去1年間の飲酒状況についてそれぞれの質問で最も近い回答を選んでください。
質問 | 回答 | |
---|---|---|
1 |
質 問 1 あなたはアルコール含有飲料を どのくらいの頻度で飲みますか? |
回 答 |
2 |
質 問 2 2
|
回 答 |
3 |
質 問 3 3 1 度に 6 ドリンク以上飲酒することがどのくらいの 頻度でありますか? |
回 答 |
4 |
質 問 4 4 過去 1 年間に、飲み始めると止められなかったことが どのくらいの頻度でありましたか? |
回 答 |
5 |
質 問 5 過去 1 年間に、普通だと行えることを飲酒していた ためにできなかったことが、どのくらいの頻度で ありましたか? |
回 答 |
6 |
質 問 6 6 過去 1 年間に、深酒の後体調を整えるために、 朝迎え酒をしなければならなかったことが、 どのくらいの頻度でありましたか? |
回 答 |
7 |
質 問 7 過去 1 年間に、飲酒後罪悪感や自責の念にかられた ことが、どのくらいの頻度でありましたか? |
回 答 |
8 |
質 問 8 8 過去 1 年間に、飲酒のため前夜の出来事を 思い出せなかったことが、どのくらいの頻度で ありましたか? |
回 答 |
9 |
質 問 9 あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かが けがをしたことがありますか? |
回 答 |
10 |
質 問 10 10 肉親や親戚、友人、医師、あるいは他の健康管理に たずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、 飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか? |
回 答 |
8点から19点の方は「危険性の高い飲酒者」、20点以上の方は「アルコール依存の疑い」となります。
なお、チェック項目についてはほかにもありますが、あくまで依存かどうかの可能性を判断するものです。結局は、チェックされているご自身が「いまの状況をどう捉え、これからどうしたいのか」を考え、考えた方向性に沿った行動をすることが大切です。
吉田 純(セレニティパークジャパン沖縄)
お酒との出会いは16歳でした。当時は周りの大人たちのように、気分を高めるために飲み始めたのを覚えています。幼少の頃より集団に馴染めず漠然と劣等感を抱えていて、気分を晴らすための特効薬を探していたのかもしれません。高校を卒業するあたりから先輩に連れられて居酒屋やスナックで飲むようになり、20代の頃は友人や恋人と楽しく会話をしながら飲めていました。二日酔いも笑い話で済まされていたものです。それが30代になると二日酔いによる遅刻、欠勤が常習的となり、ブラックアウトや失禁も頻繁に起こるようになりました。その頃から意識的に人間関係を避け、仕事も長く続けることが困難になっていききました。
田名網 岳(沖縄施設元スタッフ)
アルコール依存症の父をもち、物心がついた頃から正月や祭りなどで酒を口にしていて、中学生の頃には父と一緒に水割りを飲むようになっていました。酒癖としては悪くなかったのでとくに周りから咎められることもなく楽しいお酒を飲み続けていました。20歳で父を酒で亡くし、お酒好きであった母も膵臓がんで36歳の時に亡くしました。事あるごとに飲む理由を増やし酒量が増え続けた結果、肝臓の数値は4桁をゆうに超え、顔つきも酷い状態になって行きました。最後には、離婚後に中々会えない子供たちに会うことよりも酒を飲むことを選んでいる自分に気づき、連続飲酒に入り、「このままブラックアウトして目が覚めなければ楽になれる…」と思いながら大量のアルコールを摂取していました。
それぞれの機関は、利用料の有り無し、保険適用の有無、通所か入所か、サポート体制の濃さ、プログラム内容など、異なった特徴を持っています。ひとつだけ利用する人もいれば、幾つか組み合わせて利用している人もいますが、いずれにせよ、今までの苦しい生き方を変えるためには、どのような方法にせよ今までとは違った行動をとる必要があります。
ワンネス財団では、以下の方法で個別相談を受け付けています。
依存症を経験したスタッフ、家族としての立場を経験したスタッフがお話を伺います。
ワンネス財団では、依存に関する国際的な支援団体と連携して、
世界基準のプログラムをオリジナル化しています。
また国内で専門カウンセラー育成のための講座を開き、脱却の手段を広めています。
仮釈放・満期出所後の元受刑者や少年院出所者に対し、ソーシャルスキルやビジネススキルなどを磨くための入所型トレーニングカリキュラムを提供。受刑者が 自身の強みを活かし、生きがいを持って社会復帰できるようサポートしていきます。
仮釈放・満期出所後の元受刑者や少年院出所者に対し、ソーシャルスキルやビジネススキルなどを磨くための入所型トレーニングカリキュラムを提供。受刑者が 自身の強みを活かし、生きがいを持って社会復帰できるようサポートしていきます。