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2019.10.07

予防・回復のために、幸せが必要である

ワンネスグループ では、

全国各地で「依存症家族の会」を行なっています。(→コチラでご確認ください)

 

今日は先日の東京での家族会でお話しした内容の一部を

ちょっと書いてみたいと思います。

 

例えば、こんな実験。

あなたは、心理学の研究者から、雑誌を渡され、こう告げられます。

「この雑誌に掲載されている写真の数を当てたら、500円あげますよ」

あなたは、どんなスタンスで、その実験に臨むでしょうか。

 

もらえるお金というよりも、「間違っちゃいけない」という気持ちがあり、

何度も確認するかもしれません。

この性質の人をグループ①とします。

 

「まあ、500円くらいだから、適当でいいか」と、

チャチャっと数えてすぐに回答を伝える方もいらっしゃるかもしれません。

このグループはグループ②とします。

 

さて、その雑誌には「仕掛け」がしてあります。

ある一つの写真の説明書きのところに、

「この文章を見つけたと申告すれば、1000円あげますよ」

と書いてあったのです。

 

結果はどうなると思いますか?

 

写真の数を正確に当てる正答率は、

もちろん「グループ①」の方が高かったです。

しかし、もらう金額が高い(1,000円もらう人が多い)のは、

「グループ②」の方となります。

写真を真面目に数える人は、説明書きが目に入りませんが、

写真の数を適当に数える人は、

その「説明書き」をたまたま発見することも多いのです。

 

この実験は、みなさんの中の何名かの人生でも経験しがちなことだと思います。

自分が、コツコツと地道に真面目に頑張っている傍らで、

さほど努力していない、あまり何も考えてなさそうな人が、

チャンスを掴んでいく。

「自分はこういう性分だから」と言い聞かせるものの、

何か釈然としない。

何度も同じことを確認するかもしれません。

 

リチャード・ワイズマンというイギリスの心理学者は、

「運のいい人の法則」という本の中で、

 

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人の性格を表す「ビッグファイブ」の中でも、

「神経質傾向が低い人」が運がいい、と書いています。

神経質に物事に取り組む人は、チャンスを掴みづらい、ということです。

 

同じことが気になって、眠れない時もあるかもしれません。

「あの人みたいに、深く考え込まずに生活してみては?」と

アドバイスされても、

「自分らしくない」「あんな風になってまでチャンスを掴みたくない」

と、内心思うかもしれません。

その方々を、少しドライな考えで援護するとすれば、

この人類にとって、そういう人が必要である、ということが言えます。

人工的なものでない、ある種の精神疾患も、

どの文化でもある一定の割合で存在します。

そんな彼らも、この人類を存続するために必要だということです。

 

例えば大きな地震が来た場合。

地震が来るまで準備せず、「まあ、なんとかなるさ」という人よりも、

地震に備えて何重も準備している人の方が、生存率は高くなります。

リスクの高いことに手を出す人に比べ、

見向きもせずに石橋を叩いて渡る人の方が、

破綻に至る割合は少ないはずです。

色々な人がいることで、人類は絶滅せずにここまで生き延びてきました。

 

人類の危機に陥った時に生き残るのは「真面目にコツコツと」タイプの人ですが、

人類の危機に瀕することのない時代に生きた人は、その能力を使わずじまいです。

 

さてどちらがいいか?

 

似たような例で。

抑うつ感を感じている人と、幸福感を感じている人。

どちらが「この世の中を正しくみているか」という議論があります。

時間を正確に捉える能力などは、「抑うつ感を感じている人」の方が高いそうです。

(「抑うつリアリズム」と言います)

幸福感を感じている人のマイナスの点は、「注意力が散漫である」というところがあります。

抑うつを感じながら、この世を正しく捉える。

この世の認識は曖昧でも、幸福感を感じられる。

さて、どちらがいいか?

 

 

 

ここまでの文章は、

多少意図的に

・真面目にコツコツと準備している人=抑うつ的

・物事に楽観的で準備ができていない人=幸福度が高い

と、結びつけて書きました。

 

確かに真面目な人はうつ病になりやすいですし、

楽観的であれば幸福度も高い。

しかし、「真面目でありながら、幸福度も高い」は

ありえないわけではありません。

どんな性格傾向であろうが、幸せを感じ続けていくことはできるはずです。

 

私は、性格や行動を大きく変えようとする前に、

まずは目の前のことを「幸せ」と感じる感性を持てればいいと考えています。

 

真面目であろうが適当であろうが、それはその人の良さ。

どちらでもいい。

しかし、心理の専門家としては、「鬱にならずに幸せに生きてもらいたい」

とは思います。

一緒にするのも恐れ多いですが、

ポジティブ心理学のリーダー、マーチン・セリグマンは、

「学習性無力感」を発見した初期の研究から、現在のポジティブ心理学の発展まで

一貫したテーマとして「鬱の撲滅」を掲げています。

 

そして私も、「うつ」などのマイナスの状態からの回復は、

ただマイナスの状態をなくす、「±0」にするのではなく、

持続的に幸福感を感じられる、ウェルビーイングの向上が必須だと思います。

 

人間は、不安や恐怖、抑うつなどのネガティブな状態の時、

今までと同じ、馴染んだ選択をしがちです。

または、選択肢が極端に絞られてしまいます。

逆に、リラックスしていたり、幸福感を感じていたりすると、

色々な選択肢が思いつき、それを実行する気にもなりやすいです。

 

うつ病を抱え、行きたくない会社になんとか通っている人は、

電車のホームに立っている時、

・一歩踏み出して電車に轢かれれば、会社に行かなくて済む。

・電車を待ってその電車に乗れば、会社に行かなければならない。

という究極の選択を迫られるかもしれません。

ホームに立っている時に、少しでも幸福感を感じられる時間があれば、

会社をズル休みして、嘘の言い訳をすることや、

そもそも会社を辞めて、別の会社で自分の経験を生かす、というアイディアが

思いつくはずです。

 

依存症の治療は、簡単に言えば、

ネガティブな感情の時に、依存対象以外で解消できるように訓練する

ということですが、そもそもネガティブな感情を抱えたままでは、

周りがなんと言おうと、

解消法として、お酒やギャンブルなど依存対象しか選択肢が思いつきません。

回復の段階のどこかの時点で、幸福感を感じていて、

「これをやってみようかな」という考えが浮かび、

実践していい結果が得られてはじめて、

「自分にとってその解消法が有効である」と実感できるようになります。

 

上述の本「運のいい人の法則」では、「ビッグファイブ」の性格特性の一つ

「経験への開放性(新しいものに興味を持てるか)」が高い方が

チャンスを掴みやすいとも言っています。

幸福感を感じて、新しいものに触れてようやく、

チャンスを掴めるようになるということでしょう。

 

まとめると、

うつ病や依存症など、今「マイナス」にいる人であっても、

マイナスを0にするだけでは難しい。

「プラス」の経験をきっかけとして成功体験を得てはじめて

回復が始まるんだ、ということです。

 

繰り返しになりますが、

性格傾向やその人の置かれている環境にかかわらず、

幸せを感じることは可能です。

幸せの感情は慣れやすく、同じ状態のまま放っておくと感じづらくなるので、

瞬間瞬間幸せを感じることを訓練するのです。

 

ヴィクトール・フランクルは、

幸せは目標ではないし、目標であってもならない。

そもそも目標であることもできない。

それは結果に過ぎないのだ。

と言っています。

幸せになるために何を成すか、ではなく、幸せでいるためにどう暮らすか、

日常・プロセスの問題なのです。

 

2002年、米国のハーバード大学で、小さな講義が始まりました。

その講義は噂を呼び、翌年の受講生が激増、

数年後には、ハーバード大学で最も人気のある講座となりました。

もはや、「幸せでい続けること」は世界の潮流であると言えます。

 

ポジティブ心理学を用いた、タル・ベン・シャハーの「幸せであるための授業」。

書籍化もされています。

 

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彼は、今日書いたような、

・AかBかではなく、どちらも、という考え方。

・幸せを感じるではなく、習慣化して感じ続けること。

・自分の感情を認めること。

を訴えています。

 

日本はまだまだ「幸せ」についての科学の黎明期ですが、

それゆえこの考えの担い手となることは可能です。

 

タル・ベン・シャハーが日本の「幸せの担い手」を育成する講座が

この秋開催されます。

ポジティブ心理学ビジネスプラクティショナー 認定ワークショップ

「組織のWell-Beingを最大化する技術と実践」→サイトはこちら

 

今日(長々と)書いたように、

マイナスの方であっても、そうでない方も、

ポジティブ心理学は、どの心理学分野にも関わる「究極の心理学」であると思います。

その初歩から応用を実践できる今回のワークショップ。

参加の価値あり。おすすめです。

ぜひ申し込んでみてください!

 

ということで、今日もお読みいただき、ありがとうございました!

 

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