
2025.12.31
問いを携えて、21年目へ ― ワンネス財団2025年回顧(3)
「誰もが生き直せる社会をつくりたい」──その思いで歩んだ20年。
2025年9月、ワンネス財団は創立20周年を迎えました。
29日から大みそかまでの3回に分けて、節目の一年を振り返る最終回です。
5.現場の実践が、社会へ開かれていく
― アートを通じて獲得する「もう一つの言語」
ワンネス財団の支援現場では、言葉だけでは届きにくい思いや体験を扱うため、様々なアプローチでカリキュラム展開しています。
沖縄、奈良、三重、それぞれの自然・地の利を活かしたアクティビティ、ポジティブ心理学を扱うグループワークや個人セッションなどが軸となります。
それらのカリキュラムに「アート」の力が彩りを加えました。
財団創立20周年記念企画のひとつとして、季節の言葉とイラストで心を育む冊子『幸せに生きるための72の言葉 ― 陽だまりの庭の木漏れ日』を制作しました(一般社団法人 ignisとの共同企画)。
日本の伝統暦である二十四節気をさらに三分割した「七十二候」を題材に構成し、言葉とイラストをワンネス財団傘下施設利用者と当事者スタッフが担当しました。
印刷と製本は、大阪刑務所の受刑者が作業を担当し、完成した冊子は全国の刑務所や少年院に配布し受刑者等が自然の移ろいを感じながら自分自身と向き合うきっかけを持てるよう支援します。

奈良県のエモーショナルリテラシーセンターでは、複数のアートワークを取り入れてきました。
なかでも、プレイバックシアターという参加者が語った体験や感情を即興で演じ返す演劇的手法を用いた活動が効果をあげています。
今年3月には、こうしたプレイバックシアターの実践を東北大学にて発表しました。
民間の更生支援の現場で育まれてきた取り組みを、大学という研究・教育の場で共有することで、実践が学術的な視点からも捉え直され、社会へと開かれていく機会となりました。
同施設では演劇的実践と並行して、臨床美術のワークショップも継続しています。
2か月に1度のペースで行われてきたアート制作は、「つくる」「感じる」「分かち合う」体験を通して、言葉になる前の感情や感覚を表現する場となっています。
今年11月には、施設内での実践について、臨床美術学会 第16回大会(於:東京芸術大)で発表を行いました。


いずれも、生きなおしを「矯正」や「指導」にとどめず、体験と表現を通して回復への足場を増やしていく試み。
2025年は、その言語が研究発表を通して可視化され、現場から社会へと確かに開かれていった一年でした。
6.年末に重なった“節目の余韻”
―20周年のテーマをもう一度深めた、沖縄シンポジウム
12月21日、沖縄にて「ワンネス財団20周年/沖縄GARDEN10周年」記念ウェルビーイング・シンポジウムが開催されました。
創立20周年という大きな節目の年の締めくくりに、現場の温度を伴った対話の場が設けられたことは、2025年を象徴する出来事のひとつでした。
当日は、ドキュメンタリー映画『幸せに生きるための手引き』の上映を皮切りに、関係者へのインタビュー、そしてパネルディスカッションへとプログラムが展開されました。
映画と対話を往復しながら、「幸せ」「回復」「立ち直り」という言葉を、それぞれの立場から見つめ直す時間となりました。
パネルディスカッションでは、中島学氏(福山大学教授/ワンネス財団顧問)をコーディネーターに、沖縄少年院の溝口麻美院長、奈良県地域生活定着支援センター長の西田利昭氏、ワンネス財団共同代表らが登壇。
テーマは、「新たな立ち直り支援の眺望」。
制度・現場・民間支援が交差する中で、これからの支援のあり方が多角的に語られました。

ここでも繰り返し立ち上がったのが、「断らない支援」「命のバトン」という言葉。
一人の回復や立ち直りは、個人の努力だけで完結するものではありません。
関わる人が増え、思いが受け渡されていくことで、初めて次の一歩が可能になる——その実感が、沖縄の地で改めて共有されました。

9月の20周年記念カンファレンスで提示されたテーマが、年末の沖縄で再び現場の感覚と結びつき、より深く、より静かに染み込んでいく。
そんな“余韻”を残しながら、2025年の活動は次の年へとつながっていきます。
【おわりに】
2025年、ワンネス財団は創立20周年を迎えました。
記念カンファレンスをはじめとする一年の歩みは、「生きなおしは一人ではできない」という原点を、あらためて確かめる時間でもありました。
20周年はゴールではなく、次の一歩の起点。沖縄、奈良、三重のそれぞれのフィールドでは新しいチャレンジが既に始まっています。
ワンネス財団は21年目からも、当事者の伴走をする現場で、地域で、家族のそばで、「生きがいをもった生きなおし応援」を続けていきます。
ともに問い、ともに歩んでいただけたら幸いです。
構成・文 三宅隆之(ワンネス財団共同代表)
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