2025.03.11
プレイバックシアターと生きなおし
「穏やかな社会変革としての演劇的手法〜プレイバックシアターの挑戦〜」と題したイベントが東北大学青葉山キャンパスにて開催されました。当日は、ワンネス財団共同代表の私、三宅が登壇し、更生支援の現場でのプレイバックシアター応用と有用性について発言しました。
このイベントは、科学技術振興機構(JST)による「社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築」プログラムのなか、演劇的手法を用いた共感性あるコミュニティの醸成による孤立・孤独防止事業の一環として実施されたもので、全国から多くの関係者、プレイバックシアターの実践者が集いました。
※参考:JSTホームページ
https://www.jst.go.jp/ristex/koritsu/projects/05.html
ワンネス財団では、心理支援や様々なアクティビティを通じて、刑事施設出所者や何らかの依存症者、ひきこもり者に「生きがいをもった生きなおしの応援」を実践しています。エモーショナルリテラシーセンターでは、特色として名前の通り気持ち(感情)の学びについて多様な角度で行っており、そのカリキュラムの一つとして7年前から台本の無い即興劇、プレイバックシアターを導入しています。
プレイバックシアターとは、観客や参加者が自分の体験したできごとを語り、それをその場ですぐに即興劇として演じる独創的な即興演劇です。日本国内では主に教育や子育て、福祉医療などの現場で活用されています。
※参考:スクール・オブ・プレイバックシアター日本校ホームページ
https://www.playbackschool.com/
今回のイベントで私は、大学での実践者と共にシンポジウムに登壇。施設にて7年にわたり継続している利用者向けワークショップを詳しく紹介しました。
罪に問われる行為、非行、依存症などの背景を「生きがいに出会えていない、ウェルビーイングではない状態」と説明。気持ちについて取り扱うプレイバックシアターが、参加者個々の感情理解や感情表現獲得の可能性が、当初導入の理由であったことを紹介しました。
毎月、ワークショップを継続するなか、上記の感情理解に効果があったのみならず、様々な変化が見られました。
例えば、ワークショップ参加者から良く聞く「殻を破る」という言葉が印象的です。
「人にどう見られるか不安だから参加したくない」、「失敗したくないから即興ではなく、事前に打ち合わせしたい」という人が開始当初多くいました。しかし、他の参加者がチャレンジする姿に触発されて、自身も参加した結果、自身を縛る考えから解放された、という感想をたくさん耳にしました。
また、ある人の語りが即興で演じられることを通じ、共感や学びが受け取れている様子、そこに肯定的な一体感が生まれている様子にも立ち会うことができます。
施設入所者の多くは、幼少期に虐待、マルトリートメントの経験をしています。
生まれながらにして手にしていたはずの表現力や創造性を、心の奥底に閉じ込めることになった。それらを呼び覚ますきっかけとして、他のカリキュラムと相まってプレイバックシアターが有用であると感じています。
シンポジウムではエモーショナルリテラシーセンターでの実践に質問が寄せられ、その後のポスターセッションでも多くの関心を寄せて頂きました。
当日は、プレイバックシアターの公演もあり、初めての方から実践者まで全国から多くの方が参加されました。
ワンネス財団は「生きなおし」を「孤独の解消と自己実現」と言い換えることがあります。更生支援の文脈だけではなく、地域で、家庭や学校で、または国レベルでも「孤立、孤独」が課題になっているなか、今回のイベントでプレイバックシアターの可能性を改めて体感しました。
貴重な機会を頂き有難うございました。
ワンネス財団共同代表
精神保健福祉士/公認心理師/保護司
三宅隆之
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